和ばさみのはなし その二

今回は和服とにぎりばさみの関係についてお話ししましょう。

仕事柄たびたび和服の古着を購入しますが、古い和服のその丁寧な仕事には本当に驚かされます。

           喜多川歌麿 婦人手業繰鏡 針仕事

擦れて薄くなった着物の裏側に当て布がしてあり、目も眩むほどの細かい針目でとじてあったり、仮縫いの後本縫い、そしてその上に仕上げ縫い、と三重もの縫い目で整った美しい襟元。ほどいていく程に出会うその複雑な工程に驚くこともしばしば。壊して布の状態に戻すことがなんと大変なことか。

ただその仕事も手の中にすっぽりと収まるこのにぎりばさみがあれば手早く切りほどく事ができるのですから洗い張り(注)を主体とする日本の和服文化にはなくてはならない道具なのだと実感できます。

その後、8世紀に入りX型のはさみも日本に入ってきたのですが諸外国の様にすべてX型のはさみに占有される事なくにぎりばさみとしてその存在を残すことができたのは、ほどいて再び縫い合わせる、を繰り返す日本の和服文化と切り離せない関係だったからでしょうね。

(注) 洗い張りとは: 着物をほどいて反物の状態に戻し水洗いをして着物をきれいにする手法。かつては各家庭で年に何度か洗い張りをして作り直したりというリメイク、リサイクルが行われていたそうです。

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