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夕涼みタバーン

夏の盛りの頃、近くの朝食で有名なレストランからチラシが届く。「夕涼みタバーン、キャボットコーブ」

キャボットコーブ(追分)

キャボットコーブは4、5年前から御代田町に移転営業していたが、素朴な軽井沢店の雰囲気を望むお客さんは多い。夏の間旧店舗で月曜の夜だけの密かな営業。

今日は2度目の来店。なんと言っても歩いていけるのが嬉しい、お酒を飲んでも平気。夕刻お店を訪ねるとすでに常連さんで満員。キャボットは軽井沢に多い朝食レストランの先駆け店として全国的にも有名店だが、一方その家庭的な雰囲気で、20年近く地域に愛され続けている地元民にとっては大切な店でもある。

テラス席でドリンクとお料理

秋の気配漂う夕暮れのテラス席。蝋燭の灯り越しに常連さんの楽しげな会話と、グラスやカトラリーが触れ合う音が店内に響く。

「お帰りなさい、又よろしく。ところで、タバーンって何?」

居酒屋でした。

美しい日本の風景

飯山市 かまくらの里付近

「こんな美しい景色は久々に見た。辺り一面の水田風景。昔はあちらこちらで普通に見られた風景だったのに」。飯山駅から北へ千曲川伝いに田んぼが広がり信濃平の辺りは一面見事な黄金色に染まっていた。整然と整った水田と民家がどこまでも続く。飯山の人々が稲作をとても大切にしていることを感じた。

建御名方富命彦神別神社 (たけみなかたとみのみことひこかみわけじんじゃ)

今日の目的地の一つ目は建御名方富命彦神別神社。

大国主の息子。出雲の国譲りの物語の後、出雲を出て海伝いに能登の辺りから上陸して上越へ、その後信濃川伝いに飯山、長野、武石峠を抜けて松本から諏訪へと。諏訪大社の御祭神になったと伝えられている。

長野県の各地に開拓の伝承を残している建御名方神はこの飯山の地も干拓したのだろうか。信濃町の中心高台に位置する神社からは飯山盆地が一望できる、いい場所だ。

かじか亭

今日の目的地二つ目はこちら、富倉地区にあるかじか亭。オヤマボクチ(山ごぼう)の葉をつなぎに使った北信濃幻の蕎麦。風味は普通の蕎麦とほとんど変わりないが強いコシがあるのが特長。そのコシのせいか通常より細麺で繊細な蕎麦の味は格別。「ここまで来た甲斐があった」。

富倉蕎麦と笹ずし、いもなます、天ぷら

尾道小路

尾道風景

本通り商店街の駐車場に車を止めて、お土産の詰まったスーツケースを抱えて踏切を渡り、百数十段の階段をのぼる。額から一気に汗が噴き出した。途中一休みして振り返ると、瀬戸内海を挟んで向島の造船所のクレーンや工場の赤茶けたトタン屋根やら民家の瓦が幾重にも重なって、尾道独特の風景を醸し出していた。

湊のやど 島居邸

ようやく辿り着いた「せとうち湊のやど島居邸」は瀬戸内海を望む小高い斜面の途中。明治期この地を所有していた豪商島居家の古い洋館をリノベーションしたモダンな館。

千光寺ロープウェイ頂上付近からのパノラマ

千光寺のロープーウェイからの眺めも素晴らしかったが、ふもとから一段一段、坂を登ってこその尾道だ。脇には無数の路地がまるで毛細血管の様に家々を繋ぐ。

天寧寺の石段に腰を下ろして眼下を眺める。そこかしこに風情のある生垣、石畳に囲まれた家々、街中に点在する寺院や墓石でさえもそれ自体がまるで生き物の様に呼吸している。

島居邸に続く坂からの夜景

「尾道に来たんだ。」感慨もさることながら、差し当たり気になるのは、これ程の石段日々の買い物はどうしているのだろう?上下水道は?緊急車両や宅配は?と次々と疑問が湧く。聞く所によると、先日も冷蔵庫を麓から担ぎ上げたとか‥尾道のお年寄りは足腰が達者と自慢する。

本通り商店街

そこまでして尾道に住む理由がここにはある。その理由をもっと見つけたいな。そんな思いに駆られた。 

海に近い駅

随分遠くまで来たんだな。

下灘駅

海に面したベンチで線路越しの瀬戸内海を眺めた。次の列車が来るまでのひと時、こんなふうに海を眺めた事はなかったな。ここは愛媛県にあるJR予讃線、下灘駅。

お決まりの観光地だけでは何か物足りなさを感じる私達は、松山に入る前に少しだけ遠回りを選んだ。この駅は、青春18切符のポスターなどに採用されてからにわかに有名になったが、実際の所はごく普通の人々の生活が垣間見られる場所だった。

花の駅舎

海と駅の組み合わせは、確かにノスタルジーを掻き立てる。

下灘駅とJ R予讃線

おごっそ

ギョウジャニンニクとタラの芽

「おごっそ」とは信州の方言でごちそうを意味する。

昔は法事や祝い事をよく家でやったもので、親戚の家に呼ばれて行って食卓に着く時など父は「今日はずいぶんとおごっそうが並ぶなあ」と言って座布団に座るのが礼儀みたいなもので、仕出弁当やテイクアウトのピザなどに対して言う褒め言葉ではない。あくまでも、家主の手作りの持てなしに対しての最高のねぎらいの言葉だ。

ギョウジャニンニクとタラの芽の天ぷら 筍の炊き込みご飯

家で振る舞いごとがほとんどない最近はなかなか食卓にごちそうが並ぶ事もなくなったが、春の山菜の時期 毎日の様に食卓におごっそが並ぶ。タラの芽やコゴミ、筍やギョウジャニンニク。天ぷらやおひたし、炊き込みご飯などこの時期だけの旬の味わいは、まさに「おごっそ」にふさわしい。

工芸品のある暮らし

軽井沢に住むようになってかれこれ10年になる。多少こだわった注文住宅。作り付けの収納が主で家具もほとんど無いシンプルなしつらえに揃えてはみたが、この頃ちょっと物足りない思いを感じるのはなぜだろう。そんな時に目についたのが軽井沢彫だった。なかなか高価なものだが一つ思い切って仏壇を特注で設えた。仏壇という選択は良かったかもしれない。桜の浮き彫りと濃い茶の色合いは、他とは違う特別な家具である事を演出してくれるからだ。

軽井沢彫 仏壇

先日井上百貨店の閉店イベントへ行った。そこでの催し物会場でやっていた長野県伝統工芸店。目に留まったのがこれ農民美術。見ているとどことなく北欧雑貨の面影を感じる。マメリッコ、リサラーソン、フィッキオ‥近頃、雑誌の特集と言えば北欧雑貨ばかりだけれどこんなに素朴で味わいのある物がすぐ近くにあったとはね。(苦笑い)

農民美術 小澤敏春作 鳥楊枝入

農民美術とは画家山本鼎がロシアの素朴で美しい農村の工芸品にヒントを得て大正8年に小県郡神川村で立ち上げたのがはじまりで、その後上田市を中心に盛んに作られるようになった。松本民藝や軽井沢彫と並ぶ信州の特産工芸品。

子供の頃そんな木彫りが生活のあらゆる所に浸透していて、我が家にも玄関には上田獅子や山野草の額が、居間にはリンドウの状差、かぼちゃを模した小箱などなど。あの頃、身の回りには温かみのある工芸品で溢れていたな。そんな事を思い出した。

信濃国分寺蘇民将来符、農民美術上田獅子、軽井沢彫小箱

大手家具チェーン店の収納ボックスを買い揃えることに何か違和感を覚え始めたこの頃。私の答えはここにあったかもしれない。

下り山道

貫前神社

「おおー。」実に見事な下り山道。

群馬県にある一宮貫前神社。貫前と書いてぬきさきと読む。軽井沢の近くに日本三代下り宮の一つがあると知り行ってみる事にした。ちなみに他の2つは宮崎県の鵜戸神宮と熊本の草部吉見神社。

関越道下仁田インターを降りて、下仁田街道を15分ほど走った所にある貫前神社。創建は古く、安閑天皇元年(531)。御祭神の一柱は刀剣の神、経津主神。ともう一柱は養蚕の神である姫大神。下仁田街道沿いは古い神社が多数あり、鏑川下流の吉井には奈良時代初期の古碑「多胡碑」、高崎方面には巨大前方後円墳が密集している。群馬県はそう言う意味で意外と面白い所なのだ。

この貫前神社だが、鹿占など特殊神事が多く謎に満ちた神社とも言われている。鹿占とは鹿の肩甲骨を焼いた時にできるひび割れによって吉凶を占う手法であり弥生時代には日本各地で行われていた。御祭神の姫大神は天竺の大王の姫君であったと言う。何かと渡来系の言い伝えが多い上野国。

本殿軒先

3代将軍家光により造営された社殿の壮麗な色彩は実に見事。境内の整った植栽と併せて、上野国一宮にふさわしい。

小諸街歩き

近頃よく話題に上がるのが小諸。街のリノベーションが成功している例として全国の市町村からの見学が絶えないらしい。軽井沢の飲食店の店主オススメの店とかも増えている。軽井沢と比べて値段が安い上にオシャレで味も良いと聞けば行くしかない。

まずは、老舗の酢久商店。構えが素晴らしい古さと新しさが絶妙にマッチした外観。

酢久商店

次はお隣のラーメン店へ。自家製のお味噌(山吹味噌)を使った味噌ラーメンが売り。

酢久商店・信州味噌ラーメン店内
ラーメン店2階の美しい舟形天井

向かい側にある海應院。関ヶ原に先立つ上田合戦で真田と徳川による駆け引きの舞台となったお寺。樹齢380年の松(潜竜の松)が見事。

海應院

こちらは、相生町にあるフラワーフィールド。レトロなスナックビルを改装した花屋。スナック夕子の看板はそのままに二階に上がるとスナック夕子が見学できる。

フラワーフィールド
スナック夕子店内

懐古園の東側に沿って北国街道が続き外側には神社仏閣が囲む城下町小諸。歴史ある小諸の街並みを生かして古民家をリノベーションしたカフェや商店が続々と出展。街歩きが楽しい。

クリスマス・イブ

「いい音しか残れない」1980年。マクセルのカセットテープのCMに流れた山下達郎のRide On Timeとの出会いから43年。生活のあらゆるシーンに達郎の曲があった。

コンサートポスター

とある朝の事だ。「夏に達郎のツアーあるみたいよ」シュガーベイブ時代からを知る夫に伝えると、彼の魂に火がついたのかチケット争奪戦が始まった。7会場応募してようやく手に入れたプレミアムチケット。本来、8月7日のはずのコンサートは(風邪の為)延期となり待ちに待った再演は12月18日名古屋センチュリーホール。

名古屋センチュリーホール

音響にこだわる達郎が選んだホールと言う事もあり、オープニングから素晴らしいサウンド。

来年でデビュー50周年を迎える達郎の声は古希を超えて今、なお進化していた。シュガーベイブ時代の懐かしい曲から最新の曲まで数々の名曲が思い出と共に胸を打つ。中盤で流れた名曲クリスマス・イブ。アカペラとイルミネーションに彩られた演出は最高のクリスマスプレゼントになった。アンコールの締めくくりはYOUR EYES。それはまるで、来る年の平安を祈るかの様に届けられた。

トロルがいる

滝のある岩場の風景 マルクス・ラーション

遠い太陽、青くない空。北欧の景色はどことなく神秘性を帯びている。

踊る妖精たち アウグスト・マルムストゥルム 

松本市美術館で開催されている「北欧の神秘」展。北欧の深い森と水の世界はここがとても厳しい気候風土であることを教えてくれる。絵画展はしだいにそこから樹木や水の精霊が姿を現す。この地に根付く神話の物語が登場し見事にその景色の中に融合していた。

トロルのシラミ取りをする姫 テオドール・キッテルセン

最後にそこに加わった人々が物語の世界と共存する様にそこにいた。編み物をする女性の口からは呪文のような唄が聞こえる。

コール・マギット アンダッシュ・ソーン
ティンメルマンスガータン通りの風景 エウシャン・ヤンソン

この建物はまるで肖像画。「トロルがいる」そんな風に思えてくるから不思議だ。