1980年代を代表するポップアート。キース・ヘリング。一見顔のないフィギュア達がブレイクダンスをしているかの様な絵だが、彼が31年の短い生涯をかけて訴えたものは、核軍縮や社会に潜む様々な暴力である事を当時高校生だった私は何も知らない。
幼少期、キース少年はペンシルベニアの自宅のテレビで、ベトナム戦争という非日常的な紛争を目にした時から徐々に芽生えて来たある思い。それは20代に入り様々な平和活動とともにポップアートという形で世界へと我々にメッセージを届けていった。
ここは小淵沢にある中村キース・ヘリング美術館。彼の生涯を辿りながら、沢山の思いが感じられるオシャレでエネルギーに満ちたミュージアムです。真っ暗な部屋から始まる展示は次第にモノトーンのブース、最後はキースらしいピュアホワイトの部屋いっぱいにポップな世界が広がっていくが、それらはよく見ると、何かに対する抗議であったり互いに手をとり合う人々の姿でした。
80年代。カメラを向けられると無邪気にピースサインを出していたあの頃の私は、ヒッピーやウーマンリブ、ポップカルチャーなど、それらの本当の意味するところなど知るよしもなかった。40年越しに、少し理解したつもりで見つめると、あの時とはまた違う世界が見えてくる。