小諸市にある老舗旅館中棚荘。妻籠宿の本陣で生まれた島崎藤村がその後上京したのち明治32年に小諸義塾の国語と英語の教師として赴任した。その時足繁く通ったと伝わる宿が中棚荘。「千曲川旅情のうた」の一節にも岸近くの宿として登場しています。藤村はここの温泉の掘削にも一役かったとの話が残る。(本ホームページ雪見窓の続きの話です)
小諸市は坂の街と言われるが、中棚荘は懐古園下から千曲川へと続く坂の中腹にあり、長い渡り廊下やとりわけ浴場に向かう道は独特のうねうねとした坂が続く。昭和の雰囲気漂う客室にはこたつが設えてあり、茶びつの脇にはお隣上田市の銘菓みすず飴が。地元民なら皆知っている有名なお菓子を何十年ぶりに口にした。子供の頃によく食べた素朴な果物の味は妙に中棚荘のイメージに合っていた。
明治の佇まいをそのまま残した食事処はりこし亭は人気の料亭で、地元食材を使った繊細なお料理が自慢。館内はそこかしこに文学の漂う癒しの宿。