窓辺にかおる一輪の百合の花を、じっと抱きしめてやりたいような思いにかられても、百合の花は黙っています。そしてちっとも変わらぬ清楚な姿でただじっと匂っているのです。
牧野富太郎著書 「なぜ花は匂うか」より
NHK連続テレビ小説らんまんの主人公牧野万太郎こと牧野富太郎の随筆を見つけた。土佐佐川町の造り酒屋に生まれ、幼い頃からただなんとなしに草木が好きであったと言う富太郎。
私は植物の愛人としてこの世に生まれてきたように感じます。(本文より)
なぜ花は匂うのか。それは匂いで虫や鳥を呼び寄せ、受粉を手伝ってもらう為。と言ってしまえば簡単な事なのに、彼の随筆はそんな風には語られない。山野を教材に生涯採集と観察に明け暮れた、富太郎の知識は実に細やかでその言葉はとても優しい。